山王さん
北の川内の新定、切楠道路から100mばかりのおりたところに、山王(さんのう)さん」と呼ばれるちいさな堂宇があります。
 むかし、その辺で切り株に腰を下ろして、お弁当をひろげていた猟師が、ふと頭上で枝の折れるような音がしたので、見ると、大きな猿がいました。これは、いい獲物だとねらいと付けると、猿は、大きくなった腹に手を当てて、さするように命乞いをしました。猟師は、構わず引き金を引きました。猿は、真っ逆さまに落ちて、お腹の中の子共々死んでしまいました。
 それからというもの、あたりで、猿の亡霊が出るという噂が立ち、猟師は恐れて森には入れなくなってしまいました。村の人たちは、気味が悪く、夜道を歩けないようになりました。
 そこで、村人たちは、猿の霊を慰めようと「山王さん」を祀ったといことです。
元禄五年八月十五日のことだったということです。
 その後、山王さんに参ると、乳の出がよくなるということで、近くの女の人たちがよくお参りされるようになったということです。
 悲運の猿にことよせた言い伝えです。
 
(西有田町史下巻を参考にしました。)
堂宇全体(背景は、八天岳)
扁額と梁
内部、天井は、地元民や
有縁の人々の奉納絵
ももちゃんの西有田史跡マップ
 山王さん