秋は、実りの季節、収穫を終えた田んぼを見ていると、教え子のY.Iさんが国語の授業で詠んだ
「稲刈りの 終わりをつげる 雨の降る」(Y,I)
を思い出しました。
スポーツの秋、読書の秋、全てが充実する季節。
運動会が秋の終りに行われていたのは、柿や栗などの植物だけではなく、動物の身も体も充実するからです。木に年輪が刻まれるように、全てのいのちは、スパイラル(螺旋)的に、季節の中で、成長していきます。
受験体制や行事の効率化を優先させた春先の運動会は、愚の骨頂だと教師現役時代は訴え続けましたが、今では、有田町内の学校もすべて5月の運動会になってしまいました。子どもたちの成長のスパイラルよりも、行事消化を優先する本末転倒の教育現場を憂うのは、僕だけでしょうか?
さて、この実り、一朝一夕に実るはずはありません。因と縁との条件が整い、初めて、果としての実を結ぶのです。喜びの種を蒔き、時間と環境が育て、花を咲かせ、実ができる、
「お寺の和尚さんが、かぼちゃの種を蒔きました。芽が出て膨らんで、花が咲いたら実ができる。」そしてその実は、新たな種を宿しているのです。因果応報、いのちが受け継がれていく原理です。
私たち真宗門徒は、この「おみのり」つまり、「信心正因」を疑いなくいただき、阿弥陀如来のご本願を聞き開き、「称名報恩」のお礼のお念仏を申させていただくのです。
親鸞聖人は、関東の人々に、農作業をしながら教えを広めていかれました。念仏田植え唄という歌が残っています。
五劫思惟の苗代に、兆載永劫の代をして
一念帰命の種おろし、自力造業の草を取り
念々相続の水流し、往生の秋になりぬれば
この実、獲るこそうれしけれ
この身、摂るこそうれしけれ
(五劫の間、思惟し、兆載の長期間にわたる修行の末、仕上げられた阿弥陀如来のご本願は、比べ物にならない功徳があるので、罪悪深重の凡夫は、その願いを信じ、帰命する一念で救われる種を蒔いたことになり、不断に起こる自力の心の草を取りつつ、お念仏申す日暮らしを相続していけば、稲が実るように、私たちの往生も間違いなく約束されるのです。)
という意味で、当時の人々が、歌いながら労働することによって、つらさの中にも喜びを味わいながらの安心感(救い)を持たれたのでしょう。
願いの中に生かされ、気づくことの少ない働きに包まれ、怒りや欲にさいなまされ、それでも我儘に生きていこうとする自分ではどうすることもできない体や心、そんな煩悩具足の私一人を目当てに、五劫という長い時間をかけて仕上げてくださった救いの手立て<おみのり=ご本願>に手を合わせ、お礼のお念仏を称えていきましょう。
★10月行事(住職動静)
13日 むりょうじゅ会 夜7時半~
24日 永代経、門信徒総追悼法要 10時~12時
*今年度の該当者にはご案内を差し上げます。
●10月住職動静
*1日 大野地区高齢者サロン *6日 有田町総区長会
*松浦組組内会(明善寺) *10日 郷土史研究会
*13日,27日 伊万里栄町歌う会 *18日子育て支援会議
*29日 伊万里市立花小学校PTA 講話(いのちのお話)
*敬徳高校雅楽指導(コロナ感染予防のため不定のため不定)
●御礼 むりょうじゅクラブにたくさんの御懇志をいただきました。
京都の鈴木君代様、下関の曽我一無様、島根の三谷卓良様
新潟妙高市の長崎正音様からは、切手をたくさんいただきました。
紙面を借りて、御礼申し上げます。ありがとうございました。
★「地域の古いもの」 ㉒ 大木代官所跡(大木宿)
有田皿山代官所の前身として、大木に代官所がありました。寛永12年(1635)伊万里、山代、山谷牧の藩の牧場(馬の放牧)や山林を監督する「横目付」として赴任した山本神右衛門重澄(葉隠の著者山本常朝の父)は、陶磁器の制作のために薪入用のために乱伐された山林の保全を確保するために、1637年に826人の日本人陶工を追放し(佐賀藩の命により、多久美作守が執行)、陶器から磁器へと有田焼を制作転換させます。しかし、生産能力が落ちて、運上金の上納が減少したので、陶工たちを復職させますが、1647年にまた追放します。しかし、陶工たちの反発にあいます。どう説得したか想像しかありませんが、粘り強い交渉や伊万里に買い付けに来ていた大阪商人との交渉の末、それまで 銀35貫匁(約7000万円)だった運上金が、銀77貫680匁(約1億5500万円)に倍増しました。そのような動きの後、大木代官所は有田白川に移され、1647正保4年、山本重澄は、初代皿山代官として、有田焼を佐賀藩の財政を支える産業に育て上げたのです。しかし、旧西有田にある原明や広瀬や仏ノ原の大規模な登り窯跡は、そのような歴史の中で、何れも短期間でその役割を終えることになりました。また、波佐見(大村藩)と三川内(平戸藩)と有田(佐賀藩)の境にある「三領石」は、その名残の史跡です。(山林の保全のためのものです。)
大木代官所跡(大木宿)
202110 桃谷法信