縁と面受
 昔は、どこの家にも縁がありました。そこで、お茶を飲んだり、世間話をしたり、御法義を語ったりして、温かいつながりが出来ていたように思います。外縁がだんだん無くなり、窓が出来、アルミサッシになって、縁が消えて、内縁というより廊下になってしまいました。
 オープンなつながりが消えて、セキュリティがつながりを拒む世の中になって、さびしい限りです。代わって、ラインなどという機器を通したバーチャルなつながりに若者は妄想転倒しています。
 「この世のことは、そらごと、たわごと、まことあることなきに、念仏のみぞまことにておわします。」とおっしゃった親鸞さまの時代も、「世間虚仮、唯仏是眞」とおっしゃった聖徳太子の飛鳥時代も、世相は、現代とあまり変わらなかったようです。
 しかし、どのような形態であれ、つながり(ご縁)は、とても大切で、これこそ不思議な出逢いの中にその始まりがあると言ってもよいでしょう。そのことを実感した10月でした。

 10月の初めに、京都と鳥取に行ってきました。45年前の出逢いの糸が切れずにつながっていたことを実感したり、新しい出逢いが用意されてあったりして、本当に不思議でした。
 京都では、日曜学校(正住寺知真日曜学校)の教師だった60歳代70歳代の16名が集まり、同窓会のようなものがありました。当時バンドを組んで歌っていた熊本山鹿の寒香知軒君とミニライブをしました。
 鳥取では、後輩の山名立洋住職の養源寺で、寺子屋コンサートに出演させてもらいました。近所の三カ寺で協力して三日間連続のコンサートです。今年で九回目と聞き、素敵な取り組みをされているのだなあと感心して、歌わせてもらいました。ずっと出演されているデュークエイセスのトップテナー大須賀ひできさんwithギターの玉木孝治さん、山口の吟遊歌人「風博士」と御一緒させていただきました。プロのテクニックは、やっぱり凄いです。



           桃谷法信&寒香知軒


 終わってからの打ち上げで、朝日新聞や九月一日の本願寺新報で、取り上げられていた異色の僧侶、宮本直治さんと色々お話しました。大阪の北野病院の薬剤師で癌患者でもある宮本さんは、養源寺の山名住職のお手次でお坊さんになられたのですが、癌患者のケア、終末医療の在り方を模索しつつ、アソカビハーラクリニックで癌患者やその家族のお話に耳を傾ける一風変わったお坊さんでした。残り時間を見ながら生きる癌患者であり医療者であり、そして、僧侶として。
2013.11 桃谷法信


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