2015.9 桃谷法信

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 8月25日、台風15号の後を追うように。佐賀県立美術館で開かれている「中島潔・今を生きる」展を観に行きました。風の画家と言われる唐津市出身の中島潔さんが、京都の六道珍皇寺”心音図”奉納記念に催された展覧会でした。春夏秋冬の風の絵とともに、地獄心音図を観たかったからです。何故、今、中島さんは地獄を描いたのだろうと思ったからです。
 佐賀までの1時間ほどの車中で、平安時代の恵心僧都(源信和尚)のことを考えました。あのころの時代も今とよく似た風潮で、天変地異や疫病の流行、いのちが分断された殺伐とした時代でした。その時代を背景に、源信さまは、往生要集を書き、人間の心にすくう三毒の煩悩を、地獄として表現されたのです。業動思想としての仏教が因縁生起、因果応報を前面に打ち出して、人間関係の円滑化と道徳律と安穏な社会の形成を目指し、出家者に対しては、仏道修行の規範としたのです。 
 その後、地獄は、人間の悪の表出の抑止力として、地獄草紙や習俗として人々の暮らしに溶け込み、躾の道具として生きてきたのです。
 「嘘ついたら、地獄の閻魔さまから舌抜かれる。」「そんな悪事はたらいたら、地獄行きだぞ。」とよく言われていた人々は、アラフォー以上(40歳以上)になってしまいました。
 最近、地獄行き、と言わずに、死んだらみんな天国に行くと言っています。子どもや若者のほとんどがマスメディアの影響で、そう信じ込まされています。プラス、バーチャルな思考は、天国はゆっくり眠るところだと錯覚させる大きな働きをしています。子どもたちや若者だけでなく。大人もみんな、地獄を忘れて、刹那的に今を楽しむ風潮です。いや、今現在がテロや天変地異など現実的な地獄の様相の中にあるので、そこから逃れる場所として、天国を勝手に描いているようにも思えます。
 
 そんなことを考えながら、美術館に到着しました。
台風のすぐ後だったので、観客は、ほとんどいなくて、ゆっくり、中島さんの絵を堪能していると、若い女性が近づいてきて話しかけられました。ドキドキしていると、名刺を出して、西日本新聞の者ですが、お話うかがってよろしいでしょうか?ということで、中島さんのファンですか?どこからお見えですか?絵を見てどうですか?お名前うかがっていいでしょうか?・・・・などとインタビューされました。
 中島さんの絵の曲線のことや地獄の中にお地蔵さまが描かれていることなどを話していると、「そうなんです、地獄は慈悲の世界なんです」と記者のKさんが嬉しそうにおっしゃいました。
 地獄は恐ろしい所だという思い込みを、打ち破ってくださいました。
 中島さん自身も、図説の中で、「地獄の厳しい光景の中に、仏さまの戒め諭す優しい言葉が、メロディーのように流れていると思ったからです。」と記されています。それが、あの大焦熱地獄・阿鼻地獄の中に罪人を抱いて立っておられるお地蔵様なのだなと思いました。
 「地獄で仏」という言葉も、ただ単なる慣用句ではなく、本当のことだと思いました。

 親鸞さまは、お正信偈の中の源信和尚の功績を述べられたところで、次のように述べておられます。
 「極重悪人唯称仏、我亦在彼摂取中、煩悩障眼雖不見、大悲無倦常照我」(罪の人々み名をよべ、我も光のうちにあり、まどいの眼には見えねども、仏は常に照らします。」
 そして、源信和尚を含めた七高僧様が、阿弥陀如来の救いこそ、地獄の底まで降りて行って、抱き上げてくださる救い(拯済:じょうさい)であるとお示しくださっています。まさに、地獄の仏、地獄に仏の「仏」は、阿弥陀如来なのです。

 仏像のまね⑦ 三尊

 
仏像は、普通、如来、観音、諸天、仁王などがありますが、対になったもの(金剛力士の阿形像、吽形像)や四天王(多聞天、持国天、広目天、毘沙門天)などセットになっているものも多くみられます。
 如来像について言えば、左右に脇侍という菩薩様を合わせて、三尊の形が多いようです。
 阿弥陀如来は、観音菩薩と勢至菩薩を脇侍とされ、弥陀三尊といわれています。
釈迦如来は、普賢菩薩と文殊菩薩、です。
薬師如来は、日光菩薩と月光菩薩、大日如来は、組み合わせがいろいろで、愛染明王と不動明王であったり、降三世明王と金剛薩推、不動明王と弘法大師であったり・・・
 では、何故三尊なのでしょう。
お釈迦様の徳と知恵を示すのが、普賢文殊の二菩薩です。
阿弥陀如来については、ひかりといのちの象徴として、観音、勢至の二菩薩が脇侍とされているのです。
 この如来三尊は、色々なところで、真似されています。比叡山での修業は、一人の行者に二人の目付が付いており、親鸞さまが越後に流された時も、二人の従者が付いていました。石の枕で有名な関東の枕石寺の雪の中でも親鸞さま主従は三人でした。
 三人寄れば文殊の知恵とも言います。水戸の御老公黄門さまも、助さん格さんと三人のお忍び旅で、この三尊のまねをされていたに違いありません。
 お笑い三人組や、転覆トリオ、キャンディーズなど、芸能界でも、三尊のまねが多いように思います。

 
9月の行事予定

*13日(日)PM7:30~ むりょうじゅ会例会
*14日(月)PM7:30~ 原明お講(浦川優子さん宅)
●秋の彼岸会19日、20、21日(土日月)PM7:30~
        
20日(日)は、午前10時からもお勤めします。
*28日(月)法泉寺雅楽教室
       
毎月28日に行います。ふるってご参加ください。

●法泉寺子ども雅楽、21日の敬老会で演奏します。
       10月3日のキッズサンガ佐賀教堂にも出演します。
住職出講、13日伊万里高徳寺様、21,22日諫早浄真寺様   



一口法話

地獄のお地蔵さん