2015.10 桃谷法信

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 最近の気象現象は、地球の滅亡を想像させるような思いを起こさせる激しい風の吹き方や雨の降り方です。人間の傲慢さを大自然が諭しているようにも感じられます。1時間に100ミリ以上の降水や、風速81メートルという暴風、津波を思わせるような高波・・・・
 9月10日、関東地方を襲った豪雨で、茨城県の常総市、鬼怒川の堤防が決壊した時の救助の様子がTVで放映されました。電柱にしがみついたタクシー運転手の坂井雅夫さん(64)がヘリコプターのレスキュー隊員によって救助された時の様子を見て、固唾をのみました。     

 朝日新聞デジタル版の記事によると、

 堤防上に立って鬼怒川の水位を見ていたら、足元のアスファルトが目の前でみるみる割れ始めた。
 「やばい!」。茨城県常総市三坂町のタクシー運転手坂井正雄さん(64)は川に背を向けて駆け下り、100メートルほど先の自宅へ急いだ。
 自宅の隣にある畑の様子を確認し始めた時、流れてきた水にのまれた。近くの電柱に必死につかまるが、水位は増し、すぐに腰あたりまで達した。
 気づくと、妻(60)がいるはずの木造2階建ての自宅は流され、隣の家にぶつかっていた。周囲の家も、次々に流されていく。
 数メートル先の車の屋根の上には、長男(25)が避難していた。「大丈夫かーっ。こっちに来い」。長男は「大丈夫」と返してきたが、上流から来た流木のようなものが車にぶつかった瞬間、あっという間に車ごと流された。助けようにも、水の流れが強く、一歩も動けない。「俺ももうダメか」と思いながら、流された時につかまるための流木を足元に挟んでおいた。
 流れてくるゴミや木を払いのけていると手のひらが切れ、血がにじんだ。すねには流木が何度もぶつかり、無数の切り傷ができたが、痛みを感じない。上空をヘリが舞うようになると、何度も何度も手を振った。午後3時過ぎに、ようやく自衛隊のヘリに救出された。
 避難場所の市内の体育館では、自宅ごと流されたはずの妻が先に救助されていた。長男も救助されてつくば市内の病院にいることを、駆けつけた兄から伝えられた。2人の無事を知った坂井さんは「良かった」と目をうるませた。(遠藤雄司)

 
レスキュー隊員に抱きかかえられた坂井さんの姿を見ながら、良かったと思うと同時に、これこそ、阿弥陀如来の「拯済(じょうさい)」という救いだと思いました。
 縄やなわ梯子や竹竿をおろして、「早くこれにつかまりなさい。」という救い方でなく、救われなければならない人の所まで降りて行って、抱き上げてくださる救い、そのことを「拯済」と言うのだよと親鸞さまは、お正信偈の中で教えてくださっています。
 拯済無辺極濁悪(じょうさいむへんごくじょくあく)・・・地獄の底まで降りてきて抱き上げてくださる救い・・・とお示しくださっています。

 TVは、救助される坂井さんと救助する自衛隊員しか映りませんでしたが、その上空には、風圧や風力に負けないで、必死に操縦してくださっているヘリコプターのパイロットや、電線にかからないように救助隊員を降ろしていく人、風速や気圧の変化を計算している人、その他のクルーの力がなければ救助できなかったに違いありません。この見えないところではたらく考えも及ばない力、そのことをインドの言葉で、アミダと言うのだよとお釈迦様が教えてくださいました。
 坂井さんだけでなく、ベランダや屋根から救出されたたくさんの方々のまわりには、無量のアミダのはたらきがあったのです。
 自力にては、到底成仏できない底下の凡夫を、我に任せよ、必ず救うと誓って、拯済してくださる阿弥陀如来の本眼力に任せる以外に救われようのない私でありました。NAMO AMIDA BUTU

 仏像のまね⑧ 半跏思惟(はんかしい)
 
 
京都の広隆寺や奈良斑鳩の忠宮寺などにある弥勒菩薩は台座に腰掛けて左足を下げ、右足先を左大腿部にのせて足を組み(半跏)、折り曲げた右膝頭の上に右肘をつき、右手の指先を軽く右頰にふれて思索する(思惟)姿の半跏思惟像です。
 これは、6世紀から7世紀弥勒信仰の流入と共に伝えられ、飛鳥奈良時代の作品が多く残されています。中でも有名な京都府京都市太秦広隆寺霊宝殿に安置されている「宝冠弥勒」(国宝彫刻の部第一号)は、右手の薬指を頬にあてて物思いにふける姿で知られています。

 
親鸞さまは、御和讃の中に「56億7千万、弥勒菩薩は年を経ん」とお釈迦様の次に悟りを開かれて、56億7千万年もの長い思惟が必要なほど、人間の煩悩の闇は深いのだと揶揄されています。
 ともあれ、この姿から、深い思惟をする時は、半跏思惟のポーズをしてみようと思うのです。ロダンの考える人ほど頭を低くする必要はないのですが・・・。

 

 10月の行事予定

*1日(木)山口県厚狭西組坊守会来寺
*3日(土)キテラ(キッズサンガ佐賀)子ども雅楽出演
*8日(木)かがやけボランティア佐賀大会 講演
*13日(火)PM7:30~ むりょうじゅ会例会
*14日(水)PM7:30~ 原明お講(福島むつ子さん宅)

●永代経法要 25日(日)PM1:00~
     御講師 小長井浄真寺 
藤川秀昭師
          藤川秀昭さんは、住職のいとこです。

*28日(月)法泉寺雅楽教室
       
毎月28日に行います。親子で、ふるってご参加ください。

●30日(金)法泉寺お寺ライブ 夜7時30分
       ジャズギター職人 小畑和彦さん
       武雄の京都屋さんの紹介です、



一口法話

拯済という救い