我行精進
2015.1 桃谷法信
 昨年の12月号で、高倉健さんのことを書きましたが、再び、高倉健さんのことについて書いてみます。
 御正忌報恩講のお逮夜、法泉寺では、1月13日の夜にお勤めしていますが、お取次ぎは、毎年、有田町戸矢の浄真寺、高峰智晃師にお願いしています。
 そのご法話の中で、高倉健さんの座右の銘を紹介していただきました。
 高倉さんの事務所が流した訃報のテロップは、次のようだったそうです。
「高倉健が亡くなりました。我は行く。精進にして、忍び、終わるに悔いなし。というのが彼の座右の銘でした。」 
 なんと、それは、大無量寿経の中の偈文「讃仏偈」の最後の2行だったのです。
 高倉さんの座右の銘がなぜ、そうであったかについて、高峰智晃師は次のようにお話ししてくださいました。
 高倉さんにその言葉を紹介されたのは、天台宗、比叡山延暦寺の酒井雄哉大阿闍梨でした。酒井雄哉師は、生涯2度も千日回峰行を成し遂げられたお坊さんです。千日回峰行というのは、7年間で、千日の行を行なうもので、平安時代から約千年の間にわずか四十七人が満行しておられるだけのほんとに厳しい行です。百日回峰行を達成したものでなければ許されない厳しい行で、例えば、七年目の二百日の初めの100日は、大回りと言って、比叡の山から京都の町中をめぐり、比叡山に帰る全行程84km(マラソンの2倍)を毎日続け、後の100日は、山めぐりで、約30kmのクロスカントリー的な行程で、満行した後も100日間の五穀断ちや7日間の断水、断食の行も課せられてあり、まさに、命懸けの行なのです。  生涯、2度の千日回峰行達成者は、酒井師を含めてわずか3人だといわれています。その目的は、自利の行、利他の行を行ないながら、悟りを求めるものなのですが、酒井師が2度の回峰行を終えられた後の言葉に、身の毛よだって心震う感動を覚えました。その言葉とは、
 「2度の回峰行を終えて、やっと親鸞聖人の気持ちがわかりました。」というものだったからです。

 その酒井師も、行では、不動明王の真言を唱えながらではあったでしょうが、心の中には、あの大無量寿経の
 「仮令身止、諸苦毒中、我行精進、忍終不悔」
(けりょうしんし、しょくどくちゅう、がぎょうしょうじん、にんじゅうふけ)
「道を求めて、たとえ身は、苦難の毒に沈むとも、願い果さんその日まで、忍びはげみて、悔いざらん。」
という四十八願を述べられる前の法蔵菩薩の決意が、そのまま、酒井雄哉師の心に引き継がれてあったのでしょう。
 そして、その心を、高倉健さんは、引き継がれて、仕事をされたことは、晩年の作品にきちんと残されています。
 八甲田山、南極物語、ぽっぽや、・・・みんな。厳しい寒さの中での撮影です。久遠劫の昔の法蔵菩薩の願いが、高倉さんだけでなく映画作りのすべてのスタッフにも。至り届いている証拠は、みんな、辛抱して、耐え忍んで、精進して、作り上げた作品だからこそ、観る者の胸を強く打つのです。
 御正忌は、寒さ厳しい中のお勤めですが、こんな心温まる思いが味わえるお勤めでもあります。親鸞さまのご苦労に比べたら、なんと、もったいないことか、・・・来年の御正忌には、寒さを味わいながら、ぜひお参りください。
 (朝6時〜7時、夜7時半〜8時半)

●初お講について
 法泉寺では、毎月13日常例の「むりょうじゅ会」ですが、2月と12月は、特別にお斎のご接待があります。夕方6時ぐらいから、女性部のご馳走が出ます。昔から受け継いできたお精進料理で、およごしや掛け合い、白和えやごま醤油和えなどに、まぜご飯、ばた卸の味噌汁などが振る舞われます。昨年新たにご門徒になられた方が10人ほどいらっしゃいますが、ぜひ、お運びくださり、初お講のお斎を味わいに来てください。大歓迎です。常連のご門徒さんたちとぜひご交流いただき、法泉寺のお参りになじんでいただきたいと思います。その後、正信偈のお勤め、住職の法話、座談と続き、9時ごろにお開きとなります。ご遠慮なく、どうぞ、お参りください。

 言葉を味わう J波動

「声をかける」ということは、思いの波動を伝えているということではないのかと、最近よく思います。 「きれいになってね」と言って、花を育てる。
「おいしくなあれ」と言って料理をする。
「甘くなあれ」と言って果物を育てる。
「そしたら、本当にそうなるんですよ。」
 そんな話をよく聞きます。
 動物だけでなく、植物にも声をかけることによって 気持ちを通じさせる。
 思いを伝える言葉は、波動となって、人の心を揺り 動かす。うわべだけの言葉はすぐにわかります。波 動が伝わってこないからです。
 言葉は、人と人をつなぐツールかもしれませんが、 そこにとどまるだけでなく、木や花や石や雲や空や 海・・・周りにあるすべてのものに、波動を送る。
 そして、すべてのものの波動を感じる。そんな風に なれたらいいなと思っています。

    2月の行事予定
●初お講
2月13日 PM6:00 2月ののむりょうじゅ会は、初お講です。

  女性部のお斎(とき)の接待があります。
  かけあいやおよごし、バタ卸のお味噌汁など昔ながらのご  馳走があります。 午後6時ごろからです。
  そのあと、7時ごろからお勤め、法話と続きます。
  お酒も出ますので、飲む方は、車Xです。

2月14日 PM7:30〜原明のお講 吉永博さん宅



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