線状降水帯という言葉は、何時から使われ始めたのでしょう。
30年位前に見たサイパン沖の滝のようなスコールが亜熱帯化した日本に本格的にやってきたのです。8月28日の71歳の誕生日は、西九州が豪雨に見舞われ、武雄や大町は大事になりました。鉄工所から流れ出た油が有明海に流れ出ないように排水門を閉めたので、一向に水が引かず、順天堂病院が孤立し、人家はもちろん田や畑も水につかりっぱなしになりました。オイルフェンスをはって、ポンプ車の排水で、やっと水は引きましたが、これからが大変だと思います。油にまみれた稲や大豆は、光合成ができず。全滅。土壌も土を入れ替えなければ、作物は育たないでしょう。娘は後片付けの手伝いに友だちの家に行きましたが、仏壇や家具、畳も捨てなければ片づけられないと言っていました。災害は、これまでの安穏な暮らしを一瞬にして壊してしまいます。知り合いも多いので、心が痛みます。それでも復旧に向けての活動が始まり、ボランティアの受付も始まりました。
「人生苦なり」というお釈迦様の言葉も「災難に遭う時節は災難に遭うがよく候」という良寛さまの言葉も、一見冷たい感じですが、もし僕が、災難に遭った時にどう感じるかを想像してみると、新たな第一歩を踏み出すための励ましの言葉なのではないだろうかと感じます。
 1828年12月、良寛さまが71才のとき、マグニチュード6,9の三条大地震(新潟県三条市長岡市)が起こります。倒壊家屋12000軒、死者1500人の大災害のなかに、親友の山田杜皐(とこう)の子どもがいました。悲しみの極みの杜皐を励ます手紙の末尾に書かれたのが、上記ですが、その前段で、良寛さまは、
「地震は信に大変に候。野僧草庵は何事もなく、親類中死人もなく、めでたく存じ候。うちつけに死なば死なずに永らえて。かかる憂き目を見るがわびしさ」
と、地震に遭った杜皐の境遇を憐れみ、自分は無事でいることを伝え「人生を生きながらえてきてしまったことで、人々が悲しみに打ちひしがられる姿も多く目にすることとなった。やるせない思いでいる。」という意味の一首を添えています。
 そして、その後に、
「災難に遭う時節には、災難に遭うがよく候。死ぬ時節には死ぬがよく候。是はこれ、災難をのがるる妙法にて候、かしこ」と記されています。
 災害にあって苦しんだり悲しんだりしている人に向かって、言うべき言葉ではないかもしれませんが、「苦」という感情の真実を良寛さまは書かれたのではないかと思います。なぜなら、山田杜皐という親友は、自分も災害に遭い、子どもを亡くしたにもかかわらず、良寛さまの安否を気遣う手紙を出していたからです。
 親友だからこそ、書くことができたのでしょう。それにこたえる良寛さまも真実を書き送られたに違いありません。
 災害によって「家を壊された」という認識からは、なかなか立ち直るエネルギーは、生まれず、悲しみや苦しみを引きずって行くことになります。
 災害によって「家が壊れた」とその状況をありのままに受け入れ、今、何ができるかを探すことが災難を逃れる方法だと良寛さまは言っておられるように思います。
 清沢満之という方が、「落在」という言葉をよく使っておられたそうですが、譬えば、雪は降り積もる場所を選べません。海の中に消えていく雪もあるし、牛の糞の上に積もる雪もあります。落ちたところに存在する。そこでいのちを輝かせることが、本当に生きるということではないのかと問いかけれれています。
 このような感情を育てる土壌があるのは、良寛さまの心を育てた仏教の力ではないか、そして、そのDNAを知らず知らず受け継いでいるからではないのかと思います。
 災害の後、被災者の方が淡々と語られる言葉や表情、暴動や略奪が見られないことは、その心が、私たちの心にしみこんでいるからではないでしょうか。





●9月の行事予定(住職動静)

3日 上本老人会女性部歌う会(三葉館)
4日 
伊万里厚生年金会館 栄町歌う会ライブ
16日 上本敬老会
13日 むりょうじゅ会 
19:30~法泉寺本堂
13日~23日 
藤川省三小物焼き物展(門信徒会館)
17日 原明高齢者サロン
説法ライブ
18日 伊万里栄町歌う会
21~23日 秋の彼岸会
25日 戸矢高齢者サロン
説法ライブ
  
●秋の彼岸会 ご案内
21日 夜7:30~
お勤めと法話,座談
22日 朝9:00~
お勤めと法話
    10;00~
    小物仏具焼き物作りワークショップ
    指導:藤川省三さん(楠木原)
22日 夜7:30お勤めと法話、座談
23日 夜7:30~お勤めと法話、座談
  
*本堂・納骨堂はいつも開いています。
   *本堂の赤い冷蔵庫に飲み物があります。

  

*22日の焼き物づくりワークショップでは、仏具の小物を作ります。線香立てや香盒、ろうそく消しなど、・・・
粘土は用意しますが、細工道具は、参加される方で、ご用意ください。


 仏教的に食を味わう㉘ かぼちゃ(南瓜)  
 完全食といわれるかぼちゃは、でんぷんと糖分が同量で、独特の色素であるカロチノイドは。体内に入ると、ビタミンAのはたらきをします。粘膜や皮膚の抵抗力を強めてくれる野菜の優等生です。わざわざ、湯治(とうじ)療養に行かなくても、風邪をひかずに健康に過ごせることから、冬至にかぼちゃを食べるようになったと聞きました。
 鉄分や各種ビタミンを多く含み・肝臓の働きを助け、夏バテを防ぎます。さらに、種にはアミノ酸リノール酸オレイン酸などの良質な脂肪酸をたくさん含んでおり、母親の乳の出をよくし、高血圧や前立腺肥大症の予防薬にもなります。乾燥した種を1日10~20グラム煎じて飲むと利尿作用が、また、炒って食べると動脈硬化の予防になるそうです。

一口法話 2019 9 桃谷法信

災難を逃れる妙法

法話のページへ