戦争を支えたもの 
    

 各地への空襲、沖縄上陸、ヒロシマ、ナガサキ、昭和20年だけで、どれだけ、ものが破壊され、命が失われたのでしょう。
 8月は、戦争の悲惨さを思い起こすとともに平和の大切さ、いのちの尊さを深く考える月です。
 なぜ、戰さが始まるのでしょう。戦争は、急に始まるものではありません。仕掛けは、何年も前から始まっているのです。戦争で金もうけを企てている勢力が、色々な宣伝をして、仮想敵を世間に広め、宣伝し、法律を作り、戦争に向かう世相を作り上げていくのです。そして、それを支える仕組みが、少しづつ着実にできあがっていくのです。

 龍谷大学の学長をつとめておられた信楽峻麿(しがらきとしまろ)先生は、
「戦争中、それぞれの地域社会で、あの戦争を草の根で支えた人が3人いた。」とおっしゃっていました。

 一人は、巡査さん。常に人々の言動に目を光らせ、戦争反対など政府の方針に反するものを容赦なく逮捕し弾圧した。その結果、人々は口を閉ざし、国家の言うがままになっていった。

 二人目が、学校の校長先生。学校で、教育勅語や修身の授業を通じて、子どもたちに、いかに国家・天皇のために戦うことが素晴らしいことであるかを日々叩き込んだ。それによって、多くの子どもたちが「軍国少年少女(臣民)」となっていった。

 三人目が、寺の住職。普段から、ご本尊を背にしながら、お国のために戦うことがいかに大切であるかを説き、出兵する兵士に「陣中名号」を渡しながら、阿弥陀如来といつも一緒、心おきなく戦って来い。と送り出した。そして、戦死したものには、「軍人院号法名」を授けて、その死を讃えては、遺族の悲しみを喜びや誇りに変え、後に続くものを鼓舞し続けた。

 この三人が、草の根で戦争を支えたからこそ、国家はあのような無謀な戦争を遂行することができたのだと・・・・

「歴史は繰り返される。」という言葉が、今、大きく響いてきます。

 きな臭い法律がどんどんつくり出され、周辺事態法、特定機密保護法、集団的自衛権などのいわゆる「戦争法」、平成の治安維持法とも呼べる共謀罪は、「テロ等組織犯罪準備罪」という変な名前に変えられ、委員会採決をせずに「中間報告」という異例の手続きで成立してしまいました。「してしまったこと」ではなく「準備段階」で罪に問うことが可能になり、怪しそうな個人や団体を監視したり、盗聴したり、尾行したりできるようになる非道な法律です。そして、人間の尊厳に関わる言葉を奪う大悪法です。これらの法律は、いつでも戦争ができる準備のためにつくられたものです。

 学校教育も、森友学園の幼稚園で教育勅語を暗唱させたり、辞任した稲葉防衛大臣が、教育勅語を容認する発言をしたり、教育基本法が改悪され、押しつけ愛国心や道徳を教科として成績を点けたり、校長の権力を増大させ、教育委員会制度の廃止をも目論んでいるのです。教科書も検定が強化されたり、歴史教育もゆがめられようとしています。そして、「再び教え子を戦場に送らない。」というスローガンの教職員組合の先生方も組織率が減少してしまいました。

 宗教の世界ではどうでしょうか。
真宗大谷派では、5月18日にテロ等組織犯罪準備罪(共謀罪)法案に反対する声明文を出しましたが、それを受けた各寺院は、この法案の危険性を訴える活動には至っていません。
 浄土真宗本願寺派は、ここ10年、戦争に反対する声明を全く出していません。
 信楽先生がおっしゃるように、教団もお寺の住職も沈黙しています。誰かが「沈黙は容認です。」とおっしゃっています。戦前の住職とどう違うのでしょうか。
 防衛省の日報問題で、大臣や事務次官、幕僚長の更迭がありましたが、昨年11月の南スーダンに自衛隊が派遣されたのも「戦争法」が適用され、危険な任務を隠すために、戦闘という言葉を隠蔽したことがその原因です。自衛隊員の「身」と「思い」は、誰が守るのでしょうか。「殺してはいけない、殺されてもいけない」そのことを教団や僧侶が語ること以外に、かつての戦争協力の慙愧の証はありません。
 いのちの尊さを説く宗教者として、この8月は、深く深く考え、行動する時であろうと思います。 
 
  仏教的に食を味わう③ 典座2

 七月、お休みしたこのシリーズ、食を提供する典座について、書いてみます。
 道元禅師の「典座教訓」には、大切な3つの心得が書かれています。「三心」という心構えで、
1、喜心(きしん)
   
作る喜び、もてなす喜び、仏道修行の喜び
2、老心(ろうしん)
   相手のことを思って懇切丁寧に作る老婆親切な心
3、大心(だいしん)
   とらわれやこだわりを捨て深く大きな態度で作る心

 食材に対する敬意を持ち、食べる人の立場に立って作り、整理整頓を心がけ、調理道具を大切にすることが大事で、手間と工夫を惜しまないこと。そして、食べる方からいえば、この三心で作られた尊い食ですから、食べる方も相応の心構えが大切です。いのちをいただく食ですから、合掌し、感謝の心でいただくのです。



●8月の行事予定
  

 
5日 土曜学校9:00~10:30
 8日 大坪小学校学童保育 説法ライブ

 11日 盆経(福岡、佐賀方面)
 
13日 盆経(初盆、佐世保方面)
 13日 むりょうじゅ会 PM7:30~

 14日 盆経(長崎、諫早)
 14日 原明お講(前田征子さん宅)
 15日 盆経(伊万里、その他)
 *ご希望の日程があれば、ご連絡ください。
 
 17日 社会福祉協議会介護員 説法ライブ
 19日 伊万里栄町夏祭り 歌う会演奏   
    

 


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2017.8 桃谷法信