力を抜く

 梅雨が明けたら、朝からセミの合唱がにぎやかです。夏に生れて夏に死んでいくセミは、地上の春や秋や冬を知りません。「ケイコ(虫偏に恵、虫偏に古い)春秋を知らず」という中国のことわざがあります。曇鸞様は、セミが春秋を知らぬように人も前世や後世を知らぬ、とお諭しになり、蓮如さまは、御文章の中に、「後生の一大事をこころにかけて」と繰り返しくりかえしおっしゃっています。セミの鳴き声を聞きながら、そんな思いで夏の朝が始まります。
 セミのことが8/2の佐賀新聞有明抄にかいてありましたので紹介します。脱皮したセミが抜け殻に
「汝を憎みて捨つるにあらず、‥さぞな我を恨みん」
すると抜け殻は「生を好まず、死を憎まず、風に吹かるれば、風に随って飛び歩き、‥物と逆うことなし。形やぶれ足折れても痛まず。」佚斎樗山(いっさいちょざん)作『田舎荘子』(享保12年(1727)刊に記されています。
〈あなたは、明日をも知れぬ身、対して自分は、むしろ殻になって無事に過ごす日を楽しんでいる、「我」がないからこそ苦楽得失に悩む境涯から逃れることができた。〉
「へんちくりん江戸挿絵本」で小林ふみ子さんが読み下してくださっています。

 夏休みが始まったら、恒例の初心者水泳教室が始まりました、今年も曲川小学校のプールに入って、泳げない子(水を怖がっている子)を指導しました。今年は、12名ほどで、二人が顔を水につけられなかったので、相方の岩永敏先生にお願いして、僕は、10名ほどを見ました。ほとんどが頭まで沈むことができたので、すぐに伏し浮きをさせたら、できる子とできない子があり、一斉にスタートさせるのをやめて、一人づつ、ずらしてスタートさせ、その子に応じた伏し浮きのやり方を教えました。力を抜いて、頭を両腕で挟んで、け伸びをさせると、ひとり一人の特徴が見えてきます。しかし、子どもの学習能力は素晴らしく、30分もしないうちに、コツをつかんで、姿勢よくけ伸びができるようになりました。あとは、け伸びの姿勢を持続しながら、バタ足、片手タッチクロール、両手タッチクロールを繰り返し泳がせます。形が整ってくると、タッチクロールから、タッチされそうになる瞬間に反対の手を掻く鬼ごっこクロールをさせます。ここまで来ると、後は繰り返しですが、手の掻き方が悪い子は、なかなか進みません。
掌で水を撫でるように掻いたり、肘が曲がっていたり、・・・
 でも何とか形になっているので、今日のクロールの指導はここまで。
 休憩時間に背浮きを教えます。後ろ向きに水の上に寝そべるのですが、ここで面白いのが、力を抜くことのできる子は、すぐに浮かぶのに、怖がる子や力を抜くことができない子は、すぐに沈んでしまうということです。耳まで水につけて、おへそを出すようにすると、楽に浮くことができます。
 でも、自分の力(自力)で怖さから逃げようとすると、かえって、沈んでしまいます。水の浮力(他力)にまかせれば、浮くことができます。
 この水の浮力こそ、アミダ(阿弥陀如来)です。人間の思考を越えた大きな働き、それに身をゆだねることで、浮かぶことができる。これは、水のことだけではなく、生き方そのもののことではないでしょうか。 自分の力を頼みにして、自力で生きぬこうとしたり、他に迷惑をかけぬように頑張ることは、かえって、生きづらい人生を送ることになると思います。
 自力の計らいには、限りがあります。勉強や運動、仕事などは出来る限り力を尽くすことが大切ですが、その根底に絶対他力の大きな働きがあることを忘れてはなりません。生老病死、すべてが他力の中にあります。吐く息吸う息(18)体温(36)、心臓の鼓動(72)血圧(144)、…体の機能は、18という波のリズムに、ひいては月の動きに連動しています。この不可思議ないのちの営みで、僕たちは生かされてあるのです。
 力を抜くというのは、自力の根底に他力が働いてあることに気づいて、自在にあるととではないでしょうか。水は、どんなものにも形を変えることができます、コップに注がれればコップの形に、花瓶に入ると花瓶の形になります。仏説観無量寿経で、お釈迦様は水相感を説かれました。水を観て阿弥陀如来の働きを思うことです。
 親鸞さまは、私たちの煩悩を「氷」に譬えられ、
  煩悩、功徳の体となる 氷と水のごとくにて
  氷多きに水多し、障り多きに徳多し
と詠まれました。
 氷は、冷たいままだと氷のままですが、お天道様の光と熱で変幻自在な水に変わるのです。
私たちの心に巣食う妬み嫉み、欲や怒りも阿弥陀如来の大きな働きで、転じられるのです。氷が水に変わるように。
 力を抜いて、ゆっくり豊かに生きましょう。
 


仏教的に食を味わう㉗ 
胡瓜の田楽

 胡瓜は、若いものは、そのまま塩を振りかけたり、もろキュウでいただいたり、酢の物やサラダでおいしくいただけますが、大きくなりすぎたり、黄色くなると敬遠されることが多いようです。うたばあちゃんは、そんな胡瓜をみそ田楽にしていました。ばあちゃん子の私は、黄色になった胡瓜を見ると、妙に
うたばあちゃんの胡瓜の田楽が食べたくなり、作っています。
 きゅうりは、そんなに栄養価は高くありませんが、利尿効果があり、絞った汁は、あせもややけどによく効きます。毒虫に刺されたら、胡瓜の葉をもんで、傷口に塗ると効き目があります。葉は塩でもんで足の裏に塗ると、よく眠れます。



8月の行事予定(住職動静)
 
3日 おかしなおかしなFESTA ライブ出演(山内町おりき広場)
5~8日 9時~10時 雅楽のお稽古(法泉寺本堂)
7日 伊万里栄町歌う会
13日 むりょうじゅ会 夜7時30分~
21日 伊万里栄町歌う会
31日 あすなろの里夏祭り ライブ出演


★8月の盆経日程
 
 10~12日 ご希望に応じてお参りいたします。
          090-4989-1768まで。

13日 初盆 佐世保方面
14日 福岡、佐賀、武雄方面
15日 伊万里、その他方面



 *本堂や納骨堂は、いつも開いています。ご自由にお参りください。

  お茶の接待ができませんので、赤い冷蔵庫の中のものをお飲みください。


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一口法話 2019,8桃谷法信